隣に知らない女

人生で一度だけ、「朝起きたら隣にいるのは知らない人」ということがある。
しかしこれは私のことではなく、忘れているのは彼の方だった。
お酒の席で意気投合して話し、二人で抜け出して二軒目に行った。

そこでしばらく飲んでいて、話の流れで一緒に帰ることになった。
途中でコンビニに寄ったりしたし、別にそこまで酔っていないと思っていたが、どうやら彼はかなり飲んでいたらしい。
部屋に着いてからは、鞄を持って冬物のコートを着たままベッドに倒れ込んでそのまま眠りについた。

互いにそんな状態でとにかく眠たかった。
起きたら隣に裸の誰か、という状態よりはマシだが、朝起きてからかなり動揺している彼の様子を見て私はショックを受けた。

そもそも二人で抜け出して二軒目に行ったことも忘れていたからだ。
私の名前も、帰ってきたルートも、全部記憶になかった。
一緒に帰れて嬉しい!と子どものように言ってたじゃん!と思うが、哀しいかな、覚えられていなかった。

そもそも私は誰で、あの飲み会では誰の知り合いで、どういう流れで二人抜け出すことになったのか説明しながら、私は何をしているのだろうと哀しくなった。
地元の話もしたのに、私がどこに住んでいるかももちろん覚えていない。

車で送ってもらったが、気まずい沈黙が続いた。
迷惑をかけたからと、後日食事に誘われた。

その場でもだいぶ飲んでいたが、その日から付き合うことになった。
結局2ヶ月しか続かなかったが、今でも「私は誰で、」と説明したあの哀しさは忘れられない

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